ツララ ハーモニクススタッカート98MHSS-HX(Tulala HARMONIX Staccato98MHSS-HX)
宍道湖、浜名湖、浦戸湾などめまぐるしく塩分濃度が変化する、広大な汽水エリア。
魚はカケアガリに沿って回遊するものの、回遊レンジが1m変化するとカケアガリの照準距離は数m遠くに移行してしまう。
他にも湖、サーフ、磯、リーフエッジ…と、TULALAのブランドコンセプトの根幹である旅の釣り、遠征の釣りの中で、最も頭を悩ませるのが、遠投でした。
遠投しやすい最新のブランクスの打たれ弱さから、強い旧式ブランクスを提唱し、そのために遠投と感度をコンセプトから除外したモデルを数多く輩出。
最初のハーモニクスブランクスを作り上げるまでに、それまでのコンセプトが浸透してしまい、遠投モデルの開発が遅れていたのが現状でした。
ハーモニクスブランクスは新旧素材の融合を基本としているため、本来は新素材比率を少し上げるだけで遠投能力も感度も大幅に上がります。
しかしながら、それまでのコンセプトの上書きという点においても抵抗があり、これら性能をメインとして謳うことを避けてきたのです。
■Action:R
■Length(ft):9'8"
■PE(# MAX):2(フロロリーダー40LB推奨)
■Cast Wt(g):12~56
◇メインコンセプト
PEラインの持つメリットデメリットを把握し、飛距離、負荷分散、感度伝達など、メリットをトータルバランスで引き出すことができるガイドセッティング。
●モノフィラメント設計からPE専用設計へ
現代の釣りにおいて、ナイロンやフロロカーボンに代表されるモノフィラメントのラインでは妥協せざるを得なかった点が、PEラインの出現によって劇的な変化を迎えました。
しかしながらPEラインがいろんなフィッシングスタイルに多用されるようになっても、釣り竿のガイドセッティングは旧態依然の従来のモノフィラライン仕様のままというのが実情です。
従来のセッティングでは、PEラインのせっかくのよさが活かせず、 デメリットとすらなる事があります。
PEラインは、張りがなくラインのクセがつかないことが特徴。
モノフィラライン各種は進化したとはいえ、PEラインと比較して圧倒的に張りがあり、クセもつきます。
そのラインの張りとクセの特性から、リングサイズを大きくし、ガイド 数を少なく配置するのが従来。あくまでもこれらモノフィララインでの飛距離を優先していたからだと考えられます。
PEラインの場合、ガイド数を増やすことで、リングへの摩擦抵抗を軽減するという逆転の発想が必要でした。
●PE専用のガイドセッティング開発を通して
いくつかの事業で、これまで私自身はPE専用設定のガイドのセッティングを担当させていただく機会に恵まれました。その中には有名になった製品、ガイドシステムも存在しています。
張りがなく、クセがつかないPEラインは、数多くの小口径リングサイズを並べるセッティングが向いています。
理由は、小口径リングだからリング間のラインのバタつきを抑えることができるからです。実際のフィールドで無風な状況はまずあり得ません。
従来のように大きいリングサイズでガイド数が少ないと、リング内とガイド間隔でラインが暴れてしまい、逆に抵抗になりライントラブルとなってしまいます。
このため以前より小口径リングでガイド数を増やすPEのセッティングを作ってきました。
また小口径を多数セットすることにより、ブランクのパワーをより発揮できます。
キャスティング時やフッキング時のブランクのパワーと感度のアップ、リフティングパワーアップ、さらに各ガイドのライン角度がスムーズになるので、リトリーブフィールがスムーズになり、誘いからファイティング時の無駄なポンピングが減り、バラシも軽減します。
こうして従来のセッティングから、従来製品の中にラインナップされた小口径製品を流用する形で、最初のPEセッティングが次々と生まれていきました。
●ストローセッティングへの進化
現在私が提案しているストローセッティングは、PEラインが主流になり、ガイド素材の軽量化が推し進められた近年、従来の専用設計では妥協せざるを得なかったところをトータル的に向上させたものです。
これにはガイドを生産するメーカーや世界中のアングラーのアイデアなど、携わった多くの方の努力や知恵が関わっており、当然私一人でなし得たものではありません。
特にトップガイド製品の多様化やフランジ形状、トルザイト、SiC-S、アルコナイトといった選択肢の増加が、ニーズや価格帯に合わせたセッティングを可能にしてきました。
キャスティング時などに特にトラブルの多いティップにはガイドの形状とガイドポジションでトラブルレスなセッティングにしています。
また、ランディング時もスムーズにラインシステムが入る工夫もできるようになりました。
これら技術の向上により、過酷な状況でもストレスなく集中できるはずです。
フリーフォール時などは、ラインの無駄なたるみがなくなるので、ラインの抜けもよりスムーズになっていることを実感していただけるはずです。
ガイド数が多く増えても従来の大口径型ガイドシステムと比較してロッドの自重は変わらず、場合によっては軽くなるモデルも多くなってきました。こうしたガイド開発の歴史とともに、キャスティングの飛距離もPE専用で制作してきた従来のセッティングより数%アップしています。
敢えてデメリットをあげるなら、ラインを通すのが面倒なくらいです。 老眼の方はとくに…。(笑)